大学生の恒夫は、乳母車に乗って祖母と散歩するのが日課の自称・ジョゼこと、くみ子と知り合う。くみ子は足が悪いというハンディキャップを背負っていたが、自分の世界を持つユーモラスで知的な女の子だった。そんな彼女に恒夫はどんどん引かれていき、くみ子も心を許すが、ふたりの関係は永遠ではなかった。
『金髪の草原』の犬童一心監督が、田辺聖子の短編小説を映画化。くみ子演じる池脇千鶴は、関西弁でぶっきらぼうなくみ子の中の女性の部分をデリケートに見せて名演。妻夫木聡は、男の弱さ、ずるさ、情けなさを恒夫を通して見せていくが、恒夫が憎めない男になったのは、心の奥まで透けて見えるような彼の純な演技あってこそだろう。エロティックで美しくて切なくて泣けてしまうラブシーンも出色。恋愛の幸福感と背中合わせの残酷さを見事に描いた傑作だ。
くるりの歌もよかったな~。
ストーリーは若い二人の恋愛話っちゃ恋愛話。
ジョゼが足に障害があるってこと以外は普通のよくありがちな話。
妻夫木くんが、女の子とヤっちゃいたい盛りマンマンのフツーの若者を好演してる。そーかそーか男ってやつはぁ・・・若いな、なんてニタニタしながら観ていくのだけど、だんだん切なくなってくる。
ジョゼがとても可愛いのだなぁ・・・池脇千鶴の名演技によるところもあるのだけど。
とても 可愛い ・・・・
とても個性的な女の子で最初は驚かされるのだけれど、いつの間にか、妻夫木くん演じる恒夫と同じようにどんどん彼女に惹かれていく。
結局最後、恒夫は足の悪いジョゼの想いとかやっぱり障害者と付き合っているいろんな状況から逃げ出してしまうかのように・・・ジョゼの元を去っていく。別れたその足で新しい彼女との待ち合わせ場所に向かうんだから、なんてヤツだ!なんてちょっと憤慨してしまうのだけれど・・・
最後、新しい彼女と歩きながら恒夫は道端で崩れこむ。大泣きしながら・・・・・・
その恒夫の涙と、ラストのジョゼの凛とした姿に少し救われるのだけれど。
痛い・・・
心が胸がえぐられる想いだった・・・
綺麗ごとじゃないのだ。
全然綺麗ごとじゃない夢物語じゃない現実をこの映画で見せ付けられる。
途中、ジョゼの祖母が家に毎日のように訪ねてくる恒夫を「ジョゼはコワレモンやからもう来るな」「構うな」と何度も言って追い払おうとする。そしてジョゼにも「お前はコワレモンなんやから」って言い聞かせる。
私は最初そのシーンを観ながら、自分の孫のことを「コワレモン」だなんて、なんてひどいこと言うんだろう。もっとやさしい言葉かけれないんかな、なんて思っていた。
けど・・・観終わって分かった。祖母の愛情が。祖母は綺麗ごとじゃない現実をちゃんと分かっていた。何よりも自分の孫のことを心配していた。何よりも祖母のやさしさ、だった。
そして、ジョゼも最初から分かっていたんだと思う。
それでも幸せだったのだと思う。
人ってのは、ときどき勘違いしてしまうのだと思う。
人に対しての好奇心を好意、だと、
人に対しての親切心を愛、だと、
そんな風に人にやさしくできる自分に満足したいのだ。きっと最初はそんなもんなんだ。
それからその事実の重みに気づいたときに人は我に帰る・・・そのときどうするか、で、その人の真価が問われる気がする。
そんなこと言ったら身もふたもないだろうか。
もちろんこの映画に限って言えば、ちゃんと恒夫とジョゼは愛し合っていたと思うし、ただ、事実の重さに耐えられなかった恒夫は逃げてしまったけれど、それもある意味恒夫の素直で誠実なところなのかもしれない。
現実、自分の親切な言葉に酔い、うすっぺらな言葉を連発する人がいる。
「助けてやるからいつでも言ってこい。すぐに飛んでいくから。」
なんて・・・・
実際何をどうしてくれるっていうの。
挙句には「いつでも子供連れてきていいから」とまで言われたこともあったっけな。
一生面倒見てくれるんですか?
生活苦しいんで給料あげてください、ってのが本音なんだけど。
仕事のことや生活のことで苦しんでいる部下を目前にして、分かっていて、よく言えたもんだ。
いつもいつも熱い精神論ふりかざして大変おやさしい言葉をかけてくださっていたけれど、解決したことは何一つない。余計気分が悪くなったものだ。そんなことよりもっと具体的営業戦略とかそういうことで説教してもらったほうがよかった。
気まぐれや自己満足で美しい言葉をかけてくれるのはやめてほしい。
もちろん自分も気をつけようと思うけれど。
何もできないんならえらそうなことは言わない。黙ってたほうがましだ。
うすっぺらい言葉も気持ちもいらない。
実践とか行動力しか信じない・・・
なんて・・・
ときどきものすごく冷めてしまう自分もキライ。
ちなみにこの作品の原作は「田辺聖子さん」。
この方の本は昔から大好きだった。やさしいやんわりした関西弁、なんだけど人間の有様をちらちらと鋭く描かれている、だけどあたたかい作品が多いんだな。
ひさしぶりにこの人の本が読みたくなった。